女子のページ

在日同胞青年の「結婚問題」について
(1号掲載)

 

   参加者 李命福−中 央、安 薫−神奈川、金由美子・盧宏美−愛 知 
       高杏子−大 阪、金愛順−福 岡

結婚とは本来自由で自然なものであり、それを問題として扱うこと自体が不自然なことであります。
 しかし、在日同胞社会を見るとき、日常生活で同胞と接触する機会が少ない結婚適齢期の二・三世青年の多くは、同胞との結婚を強く求めながらも、出会いの場が少ないという切実な問題から、身近にいる日本人と恋愛をし国際結婚をしてゆくケースが年々増加傾向にあります。
 この様な青年の欲求と現実のギャップを見るとき、在日同胞社会において「結婚問題」は無視できない大きな問題であると言えます。結婚適齢期の青年が集まる青年会でも、参加のきっかけに同胞との結婚を意識しての場合も少なくなく、特に、女子会員にとっても将来像を描く上で生涯の伴侶に同胞を求める欲求は大きく、それだけに問題は深刻とも言えるでしょう。
 そこで、今度、女子のページ第一回を企画し、各地域で活動の先端を担っている女子部のリーダーたちが集まり、在日にとって「結婚問題」とは何なのか、自分たちに何が出来るのかを率直に語り合ってみました。

「在日同胞」との出会いを求めて…

 皆さん、忙しい中遠路遥々集まって下さってありがとうございます。それでは早速、本題に入りたいと思います。

 今回のテーマである「結婚」は個々人の人生の中で大きな位置を占めていると思いますが、私たちが結婚を語る場合、在日韓国人ということを抜きにしては語れませんし、在日であるがゆえに様々な状況や問題が生まれると思います。そこで、今日は当事者の立場から在日同胞の「結婚問題」についてみんなで意見交換しながら整理してみたいと思います。

 まず、日本社会に孤立分散する在日の現状から、同胞との結婚を望んでも身近な出会いの場がなくて深刻に悩んでいる人も多いと思います。こうしたことから青年会にも時々ブライダルパーティーの問い合せなどありますが、皆さんの地方ではどういった声を聞きますか?

 行事への誘い等をした時に適齢期の女性で、「男性の参加は多いですか?」と直接聞く人もいますが、やはり多くの場合青年会を出会いの場として意識しているようですね。

金由 そうですね、「できれば同胞と恋愛で結婚したい」と望んでいる結婚適齢期の女性にとって青年会の存在は大きいようですね。現実での難しさはありますが…。

金愛 うちでも三ヵ月に一度行なっている女子部の茶話会の中で、やはり結婚に関する話題がよくあがるんですが、「青年会内で恋愛結婚できたら…」と思いながらも、対象の少なさや両親の意向からお見合いで結婚相手を探そうと考えている女子会員が多いようですね。

 お見合いの形式についてはそれぞれ不満があるようですが。

 以前に神奈川でも「良縁の宴」と銘打って民団、婦人会共催で青年会も協力して集団お見合いを開催したんですが、男性の方が恥かしがりやなのか参加者が少なくて苦労しました。また、実行委員の人も同席していたためか少し話しづらい雰囲気がありましたね。

 大阪でも今春、「ドリームハートの会」というのが婦人会主催であったんですが、参加者よりもオモニたちの方が張り切っていましたね。

 せっかくそのような場を設けても、やはり自然な出会いとは違いますから、かえって雰囲気的に固くなってしまう場合も多々ありますね。

 その一方で、私たちのオモニが集まる婦人会では、これまで開催していた集団お見合いの場をもっと自然な雰囲気のものにしようということで、今年から「若人の出会い」という名称でパーティー形式で全国的に開催しています。

金愛 それは、大変嬉しいことですね。あとは宣伝の工夫として、例えば日本の三大新聞などに掲載したら、青年会に参加していない人でも同胞との結婚を望んでいる人が幅広く集ってくると思うんですけど、どうでしょうか?

 

両親から伝えられたもの

 確かに男女比を均等にするためにも参加者を幅広く募集する必要はありますね。

 でも、もし対象枠を同胞にこだわらないとしたらもっと世界が広がるのではないかという気がするんですが、何故多くの在日青年が結婚相手として同胞を強く求める傾向にあると思いますか?

金愛 そうですね、福岡の女子部で出している「アンニョンタイムズ」でも結婚特集を組んでいて、このディスカッションと同じ様なことをして、適齢期の女性五人に結構いろんなことを話してもらったんですが、「在日韓国人と結婚したいですか?」という質問に全員が「在日韓国人」という答えだったんです。中にはもっと別の意見も出るんじゃないかと予想していたんですが…。

 結局、みんな怖いみたいですね。結婚は相手も含めた家族ぐるみのことだから、自分だけの問題じゃないと思って保守的になってしまうみたいです。やっぱり日本人との恋愛はそういうことも含めて勇気が必要なんじゃないでしょうか。

 こだわりの原因は、多くの在日青年たちが小さい頃から「結婚するなら韓国人と」と教えられてきたことにあるのかしら?

金由 好きになってしまったら日本人でも仕方がないし、それは自然なことだとも思いますが、実際周りの影響は大きいと思います。周囲から「韓国人しかだめなんだ!」と言われることにより、自分でもそう思い込んでしまうところがあるんじゃないでしょうか。

 私も両親の気持を考えると日本人との結婚は難しいと思います。

金愛 私、福岡のディスカッションで思ったんですけど、日本の女性よりすごく殻に閉じこもっている部分があると思うんです。誰でも普通に生きていたら、いろいろな人と知合うチャンスって沢山あるはずですし、自然に知り合って話したりすれば、恋愛って形にもなるでしょう。

 でも、同胞の青年の場合、日本人だったらいけないとか、例えば同胞同士で付き合ったら結婚しなくちゃならないとか、いろいろと目に見えない在日の中で暗黙の了解のように作られた制限を意識して閉じこもってしまっていると思うんです。そして、そういうものって、やはり両親から伝えられたものだと思います。私の場合も「結婚するのはいつでもいいけど見合いでしろよ」みたいな雰囲気が家の中で作られていて結構それですんなり納得している部分がありますが、似たようなことが在日の青年には多いんじゃないでしょうか?そのせいで対象が同胞にしても日本人にしても恋愛することに対して、一線作ってしまっていると思いますね。

 大阪では同胞が多いせいもありますが、周りも本人ももっと自然ですね。韓国人と恋愛しているといったら両親も素直に喜んでくれます。

 

青年会の中で

 それでは、より身近な出会いの場として先程の話からも青年会に期待を持って参加してくる青年も多いようですが、現実的にはどうでしょうか?

 きっかけは青年会の中でいろいろあると思いますが、狭いエリアの中ですから、先ほどの金愛順さんの話と同じで周りからの声を意識してか尻込みしてしまうところがありますね。本当はもっとオープンに出来るのが青年会のはずだと思うんですが。

 会へ参加し始めのときは、女子会員たちも異性として男子会員を意識しているようですが、個人的な付き合いに発展した場合、お互いの行動に対する責任みたいなものを意識してしまって、女性もその前の時点で構えてしまっているところはあると思います。

金愛 それは、出会う場と意識の問題じゃないでしょうか。

 同胞と結婚したいと思っている人が、青年会に参加して民族意識も芽生えてくる中で、まずは自分のアイディンティティをしっかり確立しなければ同胞の人と結婚しようってところまで行き着かないと思うようになるんじゃないかしら?それが、青年会の中で容易に恋愛できない壁になっているのではないかと思うんですが。

 でも、恋愛感情ぬきで、男性は女性を大事にしなくちゃいけないと思い、私たちも同胞の仲間だから大切にしたいと思えることは青年会の良さだと思います。

金由 これは男性からも言えることだと思うんですが、青年会の仲間だと身近すぎて恋愛対象と感じられない女子会員も多いようですね。

 私も青年会の男性については異性として意識するというよりも、いろいろなことにぶつかって乗り越えてきた線の太さみたいな男らしさを感じますね。

 私の家もそうですが、家族だけで工場やっている人が家を継ぐのは凄いと思うんですよ。在日の生産業っていったらサンダルとかプラスチックが主で工銭は何円とかのものだから、やっぱりええかっこしたいと思うでしょう。ネクタイ締めて、サラリーマンして。私もそうでしたから。

 それでは、青年会が在日の「結婚問題」について具体的に何ができると思いますか?

 今まで行なっている行事の他に、「出会いの場」を作る事も必要だと思いますが、それと並行して会の中でも自然な交際が出来る雰囲気作りをしていくべきだと思います。そして、ブライダルパーティーだけじゃなくて「出会いの場」としてもっとアボジやオモニたちにも、青年会を活用していって欲しいですね。

 以前「’85 青年の船」の時に前京都の会長の結婚式をやった写真をよく見かけるんですけど、青年会員同士の結婚式って本当にいいですよね。私もあんな結婚式ができたらと思います。

 青年会という集まりを考えれば、直接結婚相手を求めるだけじゃなく、同じ立場の青年の意見を聞いたり、また語り合ったりすることは自分自身の生き方を模索し選択する上でとても大切なことですし、大半の同胞が日本名を使いながら日本社会に分散している現在の状況から考えても貴重な場と言えますね。

 

国籍の壁を越えて認め合う…

 ここで、厚生省の「人口動態統計」から在日の婚姻状況を見てみますと、婚姻件数の状況がここ十五年間に随分変化していることが分ると思います。一九七〇年では同胞全体の婚姻件数に対し同胞同士が約五七%、日本人との国際結婚が約四三%だったのが、一九八五年では逆転して同胞同士が全体の二八%、国際結婚が約七二%となっています。また傾向として女性の国際結婚が男性のそれより多いようです。

 宝探しみたいですね。でも国際結婚(?)て言っても周りを見るとお互いを理解し合っての国際結婚ではなく、とりあえず自分を相手の民族性で隠してしまおう… みたいな場合が多いのではないでしょうか。

 確かに、私たちは日本人から見ても表向きは違いはあまり感じられないでしょうし、在日の方も自分たちの存在をきちんと言葉で説明できる人は少ないと思いますが、だから「日本人と一緒になったら日本式でやりましょう」じゃなく、お互いを認め合うことが本当の国際結婚ではないでしょうか。現在の国際結婚(?)をしている例を見ていると、在日自身が自分にとっての民族をどう位置付けて結婚していくのかよく分らないことがありますね。

 そうですね、お互いの民族性を理解していなかっために、悲劇につながる場合も現実的にありますね。

金愛 私も両親に「韓国人と結婚しなさい」と言われ続けてきて、「じゃあ何で韓国人でなきゃ駄目なのよ!」って聞いた時に、「結婚して、五十年たった時に、やっぱり同じキムチが食べられて良かったと思うのよ」と言われると、自分自身経験がなくても、アボジ、オモニたちの気持が皮膚感覚として伝わったくるんですよね。

 以前、一世の方に「何故、国際結婚が成立たないんだと思う?」と聞かれたことがあって、私はお互いの違いを認め合って結ばれることが難しいからだと思ったんですけど、「本当に愛し合って結婚しても三十〜四十年経っても見えない壁がある」と言われて、何が壁かは解らなかったんですが…、考えさせられました。

金愛 私たちってその恐怖心を与えられるのよね。理屈では教えてくれないけど、アボジ、オモニはその匂を与えたかったのかも知れない。

 だけれど、本当に愛し合ったのであれば、お互いの違いを認め合ってそれを理解し合える思いやりを持ちたいですね。同胞同士の結婚でも難しい部分はあるはずですし。

 

「幸せ」を求めての選択

 同胞との結婚を望むにしても、日本人との結婚をするにしても、それぞれに問題があるようですが、他の意見はありますか?

 日本人と一緒になってもいいんじゃないですか?

 私の兄弟は二人とも国際結婚をしていますが幸せに暮しています。両親も一時は反対しましたが、今は本人が幸せであればいいと考えていますし、私も自分を理解してくれる人であれば、同胞でも日本人でもいいと思っています。

金愛 だから、やっぱり在日にかかわらず女性が結婚に求めるものは「幸せ」でしょうし、それを求めてどういう選択をするかだと思います。

 でも、同胞の女性は同胞の男性と付き合ってみたいと思っているんじゃないかしら。

 そうですね、一世の時代とは違って、日本人の青年世代の在日に対する妙なこだわりも無くなっていることから、私たちを取り巻く環境も昔とは違っていると思います。だから、そういう部分で必要以上に過敏になるのではなく、大事なことは、私たちがまず自分の足元をみつめることじゃないでしょうか?

 一世とは歩んできた歴史が違う私たち二・三世が、ただ同じ在日だから結婚したいというのではなく、自分と民族のつながりを整理していく中で自分にどういった結婚・結婚相手が望ましいのか、また、国際結婚をする上で何が問題なのかがはっきり見えてくるのではないかと思います。それが、幸せにもつながるのではないでしょうか?

金愛 私も以前、韓国に留学する前に「結婚相手は在日韓国人でなければいけない」ってすごくこだわっていたんですが、でも実際、自分と民族のつながりを求めながら韓国に行って本国の人、在日同胞、日本人と過す中で、自然とこだわりがとれて楽になりました。反面、本国の人と在日同胞は確かに違いますから、結婚するには国際結婚とは違った意味で難しさはあると思いますが。

 やはり育った環境の違いは大きいと思いますし、青年会の活動者も本国に関する知識が浅く、会に参加し始めてから知る韓国の事柄も多いですから、本国の人との結婚は難しいんじゃないでしょうか?私自身、日本人の方がまだ価値観が近いのではないかと思います。

 

周りと自分自身を見つめて…

 愛があれば、それも乗り越えられるかもしれませんけどね…。

 それでは、これまでの問題点を踏まえて、結婚を求めている在日同胞女性に同じ立場から何か呼びかけみたいなものはありはすか?

金愛 女性は、何よりも情緒的な安定を求めて早くから結婚を望む傾向にあると思いますが、そのために在日の場合、特に一般的に言われている適齢期にこだわり過ぎて、自分を見失う恐れもあるので、自分にとって何が一番大切なのか、何を求めているのかをみつめた上で、それを共有できる人を選ぶべきじゃないか…と思います。

 価値観の多様化と共に女性の適齢期に対する考え方も変ってきているから、そういうことに惑わされずに自分で見極めて行くべきだと思いますね。

 ただ、結婚相手を求めていても、やはり、出会いの場の少なさや、様々な条件、枠の狭さから、なかなか自分が求めるような相手と巡り合えないことは大きな問題だと思います。

金由 そうですね。でも結婚は縁のものでもありますから、その場になってみないと実際どうなるか分らないですよね。

 それでは最後に、これまで出された意見を整理してみたいと思います。

 まず取り巻く環境として、現状では在日青年が結婚相手に同胞を求めても出会いの場が少なく、その上、在日の中にある様々なこだわりから対象枠が狭められている、との問題が出されました。その一方、当事者の問題として私たち二・三世は、自分自身の民族性を観念的にとらえてしまい、整理されないまま周りの影響から安易に結婚相手に同胞を求めている傾向が強いのではないか、との意見も出されました。

 ここで在日の結婚問題における外的要因と内的要因が一応整理されましたが、こうして改めて考えてみますとこの問題は、本当に複雑で難しいことだと思います。

 そこで、これらの問題に対する対策について、民族組織が積極的な出会いの場作りや環境作りをしていく必要性が出されました。そして、当事者は、国際結婚にしても同胞との結婚を選択するにしても、まず自分の出自や民族とのつながりを整理し、自分自身が本当に求めているものを見つめて、周囲の状況や環境に安易に左右されない自分自身を確立していく努力をすることが必要ではないか、との意見が出されました。

 在日の結婚問題を語ることは、やはり私たちの生き方の問題ですから、ここで出された意見だけで解決されることではないですし、今後ともより具体的に考えていかなければならない問題であると思います。

 こうした結婚問題について、これまで青年会は五周年事業の「未来をみつめる会」等で部分的に取り組んできましたが、国際結婚の増加傾向からも問題が年々深刻さを増す中で、有効な取り組みが緊要な課題であると思います。

 みなさん、長い時間お疲れ様でした。

 [目次へ]

[フロント・ページへ]

annyong@seinenkai.org

皆さんのメールが励ましになります。

どうぞお気軽にお送りください。