―――韓国と日本―――
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私は一九八七年から九一年まで韓国の延世大学に留学していました。通学にはもっぱら地下鉄を利用していました。
私はソウル市北部の高層アパート郡が立ち並ぶ「上渓住宅団地」に近い、月渓洞という町に住んでいました。ここには「石渓駅」があり、いつもこの駅を利用していました。ソウルの地下鉄の混雑ぶりは有名ですが、朝の通勤ラッシュはピークに達します。当時の新聞に「ソウル地下鉄事情劣悪−最高乗車率二百四十%超過−」「地下鉄で乗客の女性−内蔵破裂し死亡−」なんていう信じられない記事が出ていたほどです。私も満員列車では、混雑の波にのまれて列車を降りられず、乗り越してしまったこともしばしば。これは、単に私がドンくさかったせいかも知れませんが…。
また、今思えば笑い話ですが、ギュウギュウ詰め(まさに内蔵が破裂するくらい)の満員列車のなかで、気がつくと「足が宙に浮いていた」なんてこともあったほどです。
そんな地獄絵図のような満員列車の通学も今ではよき思い出ですが、ふと振り返ったとき、興味深い事実に思い当ります。それは、韓国の電車のなかで乗客同士のいざこざやケンカ沙汰に一度も出食わさなかったことです。あれだけの混雑で、乗客はストレスもたまるでしょうし、イライラもするはずです。しかし本当に私は、一度もそのような場面に出食わすことなく韓国を後にしたのです。
今私は、横浜市緑区に住んでいます。職場までは電車とバスを利用して通勤しています。
毎朝七時四三分発の「水天宮前駅」行き急行列車が私の愛用列車です。駅のホームには約三メートル間隔に、ホームいっぱいに規則正しい三列毎の長蛇の列ができます。普通列車では渋谷駅まで約四〇〜五〇分かかりますが、急行だと二五〜三〇分で着いてしまうので、通勤サラリーマンや学生たちがこの急行列車に乗客が集中するのです。列車の中はまさに身動きもままならない缶詰め状態となります。
車両の中は「殺気」や「悲壮感」という険悪なムードに包まれています。私は乗客同士のやり合いを何度も目撃しました。「てめ〜、足ふみやがったな!このブス女」(若い男性vs若い女性)とか、「ふざけやがってこの野郎!次の駅で降りて待ってろヨ」(若い男性vs中年男性)「押すな!このバカ」(しょっちゅう)、「痛って〜ナ、オラ」(若い男性vs中学生の男の子)といった義理も人情も、思いやりもないやりとりに失望することもしばしばです。
韓国人だってストレスもたまるでしょうし、当然怒りもします。
でも、電車の中で人を罵ったり、ケンカしたりという場面を私は一度も見たことがありません。そのかわり韓国の人は満員電車の中で「アイゴ〜チュッケタ!」(も〜、死にそうだ)とか「ピョ・プロジゲッタ!」(骨が砕けそうだ)とか「ヤ〜、イ〜インガンドゥラ〜」(何で人間がこんなに多いんだ)と、大声で叫んでいたのをよく見ました。もしかして、それがストレス解消の表現だったのかも知れません。日本と韓国ではもう一つ大きな違いがあります。列車のシートに座ってうたた寝してしまったときです。つい、隣の人に寄りかかってしまうことってありますよね。そのときの、寄りかかられた人の態度です。日本だと必ずといっていいほど、必殺の「エルボー・スマッシュ」で目が覚めます(若い娘さんのは特に痛い)。寄りかかった私はまるで犯罪人扱いです。韓国ではどうでしょう。もちろん、人に寄りかかられて喜ぶ人はいないでしょうが、私は「エルボー」は食らったことはありません。実際そのような場面を傍らから見ていたときに、寄りかかられた人は黙って我慢していたような気がします。この事実だけで韓国人と日本人の精神構造の違いなど語れるはずはありませんが、日常のこうしたささいな出来事に、私は韓国人と日本人との性格(韓国ではよく「人間性」といいます)の違いが現われているような気がします。
ここで一つ提案があるのですが、日本の満員列車の殺伐とした雰囲気を解消するために、電車の中でクラッシックなどの音楽を流してはどうでしょうか?少しは雰囲気が和むと思うのですが…。とにかく、日本全国の満員列車で揺られて会社通勤している同志の皆さん!皆で協力して明るい満員列車にしようじゃあ〜りませんか!
最後に一言、「日本よ、精神大国たれ!」じゃんじゃん。
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