あんにょんブログ
青年会みんなの情報ブログインタビュー 崔正憲さん
アンニョンハセヨ、インジュです。
今日は「あんにょんブログ」でエンタメを担当している崔正憲(ちぇ・じょんほん)さんにお話を伺いました。
日曜日の渋谷で낮술(ナッスル=昼酒)をしながら(笑)映画への情熱や考察をたくさん聞かせてもらいました。
高校時代はスイスに留学して同時期に金正恩氏もいたなど、ユニークな半生です。 マイノリティーは武器、そしてどの経験も糧になるという話に、私自身も励まされました。
――映画に関心を持つようになったのはいつからですか?
映画は好きだったけど、昔から浴びるように観ていたってわけでもないんです。29歳で(日本初の映画の専科大学である)日本映画大学に入ってから、年間300本を見る生活になりました。
誤解を恐れずに言えば、人生って死ぬまでどうやって暇をつぶすか。僕は映画に出会えたおかげで、もう一生大丈夫だと思っています。
――日本映画大学に入ったきっかけは?
もとは別の大学で経営を学んでいました。卒業後に企業で働いていたんですが、体を壊してしまって。漢方の治療を受けようと韓国へ行って、高麗大学の語学堂に通いました。2年弱くらい滞在して楽しかったけれど、体はなかなか良くならなくて。
東京に良い先生がいると聞いて行ってみようと思ったころに、ちょうど日本映画大学が1期生を募集していることを知りました。もともとは専門学校で、映画監督やお笑い芸人などたくさんの人材を輩出しているところです。
韓国にいた時、向こうで役者をしている日本人の友人の紹介で、何度かちょっとした日本人役で映画に出ることがありました。実写もおもしろいなと思っていたんです。
それで映画大学に入ったら、見事にはまって。先生たちもみんな現役の映画関係者だからすごくおもしろい。飲み始めた治療薬も効いて、体調も良くなりました。
卒業後はドラマの助監督になり、「世にも奇妙な物語」などに携わりました。とにかく体力勝負で寝る暇もなかった。
今は映像関係の別の仕事をしていますが、助監督の時と比べると夢のようにたくさん時間がある。今年こそは脚本を書いて応募したり、小説も書きたいと思っています。今はiPhoneでも映画を撮れるんだし、どんどんやっていかなくては。
――日本映画大学ではどんなことを?
脚本・演出コースで学び、「あんにょんブログ」のプロフィールに書いてある作品はいずれも在学中に撮ったものです。
姉妹校の韓国芸術総合学校と撮った「熱」という作品は、韓国で自堕落な生活を送る日本人留学生の話。向こうのスタッフとあれこれ言い合ったりして作り上げました。
俺の名前でYoutubeで検索してもらえると見られます。あとは16ミリフィルムで撮る機会があり、在日を描いた「ナニジン」という作品もあります。リテークなしのぶっつけ本番ですごく楽しかった。
映画とか表現する人にとって、マイノリティーであることは武器。他の人が知らない世界を体験して知っているわけです。
母親は通名を使っていたのが嫌だったそうで、俺はずっと本名を使っていました。小さい時はからかわれたりして嫌だったけれど、今こうやって表現しようと思っている立場だと、良い経験だったと思える。それと名前を覚えてもらいやすいからラッキーだとも思います。
今は在日にこだわらずに書きたいと思っています。大学の時も、「そこに頼りすぎだ」と指摘されましたし。賛否両論起きるような内容を、ガツンと恐れずにやりたいです。
――映画の魅力って何でしょう?
人生を豊かにしてくれますよね。映画って意味がないシーンは一つもないんです。階段の上から下に話しかけることは、権力を現していたりします。橋を渡ったり、ドアを開けたり、すべて意味がある。
たとえば政権批判をしたいと思っても、直接的に撮ったら企画も通らないし、スポンサーもつかない。それをいかに間接的に表現するか。表面的なものだけを見るのではなく、これは何を表現しているのだろうと意識してみると良いです。
どんなにつまんないと思う映画でも、一つでもおもしろいと思うところを発見できない自分の方がバカ、と思って観てみるとおもしろいですよ。幸せもそうだけど、自分がどう感じるかとか、気付くかというところだから。
映画で世界を知ることもできる。韓国ってこうやって酒飲んだり、ゲームしたりするんだって発見もある。人間の業とか弱さとかもそうですよね。
韓国の映画はおもしろいし、良い役者が多い。暴力描写が多くて嫌いだと言う人もいるけど、俺は好きなんです。痛みを感じて、生きていることを感じられるからなのかな。ちょっと突き詰めて考えられていないですけれども。
「あんにょんブログ」ではネタバレも多いし、取っ付きにくい映画が多いかも知れないですが、好きな韓国映画を紹介していきたい。
ぜひたくさん映画を見てほしいです。
あんにょんシネマ記事はこちら→許されざるもの ・ 子猫をお願い ・ 悪魔を見た
聞き手:アン・インジュ
1984年ソウル生まれ。1990年に来日、神奈川県で育つ。延世大学校政治外交学科卒。日本の全国紙に勤務中。お酒が弱くなったことが悩み。