映画『1987、ある闘いの真実』
あんにょんはせよ。青年会のむんよんすです( *´艸`) 今回は私が実際見てきた現在絶賛上映中のホットな作品を紹介します。
それは『1987、ある闘いの真実』です。
1987年の韓国は全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領の下、軍事政権が圧政していた。それにあえぐ国民が大統領への反発を募らせ自由と平等を約束する民主化運動を展開していた。なかでも学生による反政権デモが激化し、デモのリーダーとの関係を疑われ南営洞警察で取り調べを受けていたソウル大学生の朴鍾哲(パク・ジョンチョル)が警察の取り調べ中に拷問により命を落とした。本作はこれをきっかけに拡大していく民主化運動を描いた国民が国と戦った衝撃の実話映画である。この話は今からたった31年前の話である
本作は朴鍾哲の死から始まる。報せを聞いた南営洞のパク所長は部下に火葬を命令する。部下は死因を「心臓麻痺」とした書類を持ち、公安部長のチェ検事のところへ火葬許可申請に来た。書類を見た公安部長のチェ検事は「22歳で心臓麻痺?ソウル大学生の息子の死も確認せずに親が火葬を許可するか?」と警察の“嘘”にすぐに気づく。今夜中に火葬する許可を迫るパク所長の部下にチェ検事は法律通り解剖で死因を解明するように言い渡す。状況から見て「拷問による死」だと睨んだチェ検事は上司から「パク所長に盾突いて生き残ったやつはいない」と諭されるも、腹を決め事実を追求する。
中央日報の記者にこれをリークし「取り調べ中の大学生ショック死」という記事が流れる。慌てた警察は「捜査官が机を叩くと、驚いた学生が心臓麻痺で倒れた」と馬鹿げた声明を発表する。こんなものを誰も信じるはずもなく、国民の不満は大きくなり、マスコミの動きもエスカレートしていく。
病院では「最後に息子の手を握らしください」と慰霊室に入ろうとする家族を警察が人目もはばからず無理やり押さえつけ、暴力をふるい、連行するシーンがある。「最後に息子の手を握る」そんなことも許されないのか。どれだけ国家が強く、国民が弱い存在なのかを表している。これがたった31年前の話なのである。
死亡解剖の結果「水責め中に浴槽に首が当たり窒息死」と判明し、立ち会った朴鍾哲の叔父が病院の外で群がる記者たちに「警察が殺しました」と泣き叫ぶ。しかし翌日の記者会見では「暴力行為は一切なかった」と言い張る警察。
もはや警察の言葉など信じない記者たち。記者のユンはチェ検事を訪ねる。公安部長の職を解かれたチェは荷造りをして出ていくところだった。チェはユンに憎まれ口をたたきながら、わざと駐車場に解剖鑑定書を置いて行った。ユンはそれを持ち去り、東亜日報が事実を報道する。これによりパク所長の部下の刑事二人が「拷問致死罪」で逮捕される。大統領からの命令で二人に罪を押し付けたのだ。この二人にも家族がいる。自分の身を守るためなら誰を犠牲にしても、何をしてもいいという風景が二人の逮捕や刑務所での面会シーンでは描かれている。だが警察官二人が逮捕されるだけで国民が納得するわけもなく、民主化運動はさらに激化していった。
民主化運動で指名手配中のキム・ジョンナムは、国家ぐるみの陰謀だという情報をつかみ、ともに活動するハム神父と真相を暴く決意を語る。そんな彼らに刑務所看守のハンが密かに協力する。指名手配犯、神父、看守などそれだけでなく他にも大勢の普段では関りを持つこともないようなものたちが「民主化のために」「真実を明らかにするために」集まり、協力する。
学生運動も相変わらずデモを展開していた。大学に入り「光州事件」の真実を知りショックを受け、それを機に学生運動の先頭に立つ男子学生や、デモをしても何も変わらないと考える女子学生など、いろんな人間の思想やドラマが詰め込まれている。しかし、この学生運動にさらなる事件が起きる。
そして最後のエンドロールではその時の実際の民主化運動の様子を撮った写真が流れます。私はこの作品を見て、在日3世として勉強にもなった反面受けたショックも大きかったです。その中で感じるものも大きく、在日とか韓国人とか日本人とか関係なく、多くの人に見てもらいたい映画です。
私がこの映画と出会ったきっかけとなったのは『沸点』という一冊の漫画でした。この作品は1986年1987年の「学生運動」とそれに携わる「家族」をテーマにしています。この本で『1987、ある闘いの真実』が紹介されていました。
この本を読む前に、この映画を見ていたら大方のあらすじは理解できても、細かなところや時代背景を理解できていませんでした。例えば、劇中に「あか」という言葉がたくさん出てきます。パク所長は「あか」を捕まえることに必死です。この「あか」とは「共産主義者」を指す言葉です。まぁ、実際は共産主義者でも何でもない人を勝手に「あか」と呼び連行しているだけなんですけどね。他にも急に朴鍾哲の死から始まるが、なぜ朴鍾哲は取り調べを受けていたのか。彼自身は何者なのかなどわからなかったはずです。ですので、この映画を見るときは空っぽの状態からじゃなく、少し前知識を入れてから見るのがおすすめです。
劇場でも紹介されていましたが「沸点」はわかりやすく、漫画なので見やすくお勧めです。
(よんす)
映画『1987、ある闘いの真実』
チャン・ジュナン監督
9月8日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。