あんにょんブログ
青年会みんなの情報ブログなまず(2019)
“なまず”と言う映画についてお話したいと思います。最近見た映画なのですが、荒削りながらも非常に面白いと思ったので紹介したいと思いました。女性監督であるイ・オクソプ監督の長編第一作目になります。イ・ジュヨン(ドラマ”梨泰院クラス”などに出演)やク・ギョファン(映画”半島”などに出演)といった最近注目の若手俳優や、ムン・ソリ(映画”ペパーミントキャンディー”などに出演)と言った有名な女優が出演しています。
簡単なあらすじは…
病院内でのセックスを撮ったレントゲン写真が出回り、人々は写真の被写体は誰なのか探し始めます。誰が盗撮したのかは誰も興味を示さず、誰の写真なのかということに人々は興味を示すのです。そして病院で働く看護師ユニョンは自分と恋人の写真ではないかと自ら疑い始めます…
なぜこの映画のタイトルが”なまず”かと言うと、この話を進めるナレーターがなんと病院の患者が飼っているなまずなのです。面白い設定ですよね。
私は映画の序盤で、加害者よりも被害者が誰なのか注目する設定が、現実社会でも同じようなことが起きていると共感を覚え、その勢いで最後まで鑑賞しました。自転車に向かい合って二人乗りするシーン(北野武の映画”キッズリターン”での二人乗りに近いですがちょっと違います)や、再開発地域に指定され、建物が壊された土地に敷かれているブルーシートをビーチに見立て、再開発反対の抗議を人々が行っているシーンなどのウィットに溢れるシーンにより、この映画は独特な雰囲気を醸し出しています。クスクスと笑える場面もいくつかありました。この世界観を作り出した監督はすごいと思います。
”なまず”は韓国で独立映画と分類される映画です。ですので今回は韓国での独立映画についてお話しましょう。
まずは独立映画とは一体どんな映画なのか?
芸術映画、低予算映画、独立映画など、似たような表現があり、混同して使われることが多いのですが、独立映画というのは自主制作の映画や、映画振興委員会などからの商業目的ではない制作支援金などにより作られた映画のことを指します。独立という言葉は映画制作の資金が、商業ベースの投資や制作会社からは独立してるという意味です。それとは反対に商業映画というのは大手の映画制作会社が商業的成功を目標に集めた資金で作られた映画のことを指します。
ちなみに映画”なまず”は国家人権委員会による人権映画プロジェクトによる作品です。このように商業目的ではないところから資金を得て作られた映画を独立映画と呼びます。
韓国でヒットした有名な独立映画といえば、ドキュメンタリー映画「ウォナンソリ(牛の鈴音)」や俳優ヤン・イクチュンが監督、脚本、製作、主演を努めた映画「息もできない」などがあります。
このような独立映画はミニシアターなどで上映されることがほとんどですが、韓国ではCGVやロッテシネマのようなシネコンに芸術・独立映画を上映する専用館があり、そのような劇場でも独立映画を見ることができます。
毎回なるべく日本からでも簡単に見れる映画を紹介しようと思ってるのですが、残念ながら今回紹介した”なまず”は日本ではまだ見る機会がなかなかありません。
これから日本への海外配給が進めば、ネットや劇場で見ることができると思いますが、独立映画の海外配給は商業映画ほどスムーズにいかない場合もあります。映画を公開するためには宣伝も大事な要素の一つです。上映、配給には宣伝費などのお金が更に必要なため、金銭的に余裕のない独立映画にとって、簡単なことではないのです。
個人的な感覚ですが、日本よりも韓国の方が独立映画業界が盛んな気がします。韓国では日本に比べて映画を芸術として捉えている傾向が強いことが理由の一つではないかと考えています。なぜかというと、日本では芸術系の大学や専門学校で映画を学ぶ学生が多いのですが、韓国では総合大学に普通に映像系や映画学部があるためです。(明治大学や中央大学のような総合大学に映画学部があると思っていただければ。)
一度、日本映画大学の先生とお話する機会があり、なぜ日本の総合大学には映画学部がほとんどないのかと尋ねたことがあるのですが、日本の大学では美術や音楽といった古典芸術の力が強く、映画のような新しい芸術はまだ芸術として受け入れられてない傾向があると仰っていました。
学問として学ぶ機会が少ないせいなのか、日本では映画を芸術よりもエンターテインメントや娯楽であると捉える感覚が強いのかもしれません。
個人的な考えとしては、映画をどう捉えるかは個人の自由ですし、楽しみ方は人それぞれだと思います。それでも映画を芸術と捉えるか、娯楽と捉えるか、それによりみなさんのこれからの映画との付き合いも変わるのではないでしょうか?
ちなみに映画を作るにあたって、どこで映画を学んだかなんてことは全然重要じゃないと思います。なぜなら映画の学びには決して絶対的な正解がないと思っているからです。どこで学んだかより、結果どんな映画を作るかということが一番大切だと思います。今はスマホで簡単に動画が撮れる時代です。見るだけでなく作ることに興味のある方は一度、周りの友人と一緒にあなただけの独立映画を撮ってみるのはどうでしょうか?
*日本では独立映画という表現はあまり使われずインディペント映画や自主製作映画などの表現が使われています。
*韓国の独立映画という言葉はアメリカでIndependent filmと呼ばれていますが、韓国での定義とは少し違います。ワーナブラザーズ、20センチュリーフォックスなどのメジャースタジオ6社以外で作られた映画のことを指します。
そして最後に勝手ながら個人的な宣伝です。
現在、私の作った短編映画”韓国式”がソウル国際超短編映画祭の回顧展でオンライン上映中です。韓国で働く朝鮮族の方をテーマに撮った11分ほどの短い映画です。
2020年9月20日までの上映予定で、しかも英語字幕しかなく、さらに見るためには会員登録しログインする必要がありますが、もし興味のある方はぜひご覧ください^^
下のリンクからご覧になれます。
http://www.youup.kr/youup/player/movie/MV-61902555-ee31-4a5e-8356-46b7a1f9d3c7
映画の感想などございましたら
こちらの方に送っていただけると嬉しいです^^
それではまた次回お楽しみに!
(ジニュン)