あんにょんブログ
青年会みんなの情報ブログ在日韓国人青年の海外赴任日記18-香港と中国(その3)-
海外赴任中の在日韓国人青年のユインです。
今回は前回・前々回に引き続き,香港と中国の関係について共有しますね。
(本記事では便宜上の理由で香港と中国を並列して記載しています。特定の政治観を主張する趣旨のものではありません。)
前回の記事の最後で,大陸出身の中国人は「香港人は冷たいと感じることがある」ということに触れました。「同じ中国人なのに,何故?」と不思議に思いませんか?
香港人にとって,中国や中国人との間に「心理的な距離」があることが多いようなのです。実は僕がこの「香港と中国シリーズ」で,在日同胞の皆さんや,韓半島に住む韓国人に伝えたいのはこのことなんです。僕個人的には,韓半島の統一を語るにはまだまだ時期が早すぎると思うのですが,将来的に時期が来たときに,この香港人の「心理的な距離」から学ぶことはとても重要だと実感しています。
まずは,この写真を見てください。
今までの記事を読んでくださっている方はもう覚えているかもしれませんが,改めて。1997年7月1日に香港はイギリスから中国に返還されました。それに伴い,毎年7月1日は香港では返還記念日として祝日になっています。
そして,7月1日には毎年香港で大きなデモがあります。デモの矛先は,中国政府(そして親中国的な姿勢を見せている香港政府)に向けられています。このデモは,(たまたまですが)僕の住んでいるアパート前の大通りを封鎖して実施されています。
写真の右下に,イギリス国旗のような旗があるのが見えますよね。これは,イギリス時代の香港の旗なんです。実は香港には「イギリス領に戻って欲しい」という主張をする人が一定数いるようです。また,「自分は中国人ではなく香港人」と主張する人は僕の生活上もかなり多い実感です。
僕の香港人の同僚は「もし『どこの国出身ですか』と聞かれても,私はついつい『香港です』って答えてしまいます。香港は国じゃないから聞かれていることに答えていないのは分かっているんですが,なかなか中国出身です。とは言えないんです」と言っていました。
僕が香港での生活者として観察している限り,香港人は中国に対して警戒している人が多いような印象を持っています。(警戒レベルの程度は人によって異なりますが。)
僕が自分で撮った写真が無いのでこの記事には載せられないのですが,2014年に起きた通称「雨傘運動」や2015年に起きた「銅鑼湾書店の関係者失踪事件」など,本来は香港に介入できないはずの中国政府によると見られる事件が度々起こり「香港がイギリス時代に培った高度な民主主義が侵されている」と考える香港人が多いようなのです。
先日,香港と中国本土を結ぶ高速鉄道が開業したのですが,香港の領土内に中国の入管施設を作ることが決まると猛烈な反対運動が巻き起こりました。香港領内にある駅であっても,中国の入管施設を超えてしまうと中国の法律が適用されてしまうからです。
政治面以外にも,数年前に中国で粉ミルクにメラミンが混入する事件が起こった時には,香港中の粉ミルクが中国人に買い占められる。という出来事があったそうです。このため香港人が粉ミルクを買えなかったり,値段が上がりすぎたりということがあったそうです。(陸続きですからね…。簡単に買い物に来れてしまうわけです。)
また,上がり続ける香港の不動産の原因の1つは中国本土の富裕層による投資があると言われています。「アパートの値段が上がりすぎて,契約更新のタイミングで家賃の値上げを突き付けられてしまい,どんどん不便なところに住まざるを得ない」ということは香港で生活しているとしょっちゅう耳にする話です。
などなど,香港人の立場だとキリなく「中国への愚痴」が挙がってきてしまいます。日常生活から政治まで,陸続きの中国本土からの強い影響を受けていることもあり,中国本土に批判的な香港人が多いように感じます。
一方で第三者の視点から見ると中国返還以後,香港経済は中国本土からの旅行者や投資マネーの依存が強くなり,中国無しで経済が成り立たなくなっていることも事実です。経済面では中国に頼りながらも,心理的な距離は遠い。なんだか複雑な心境です。
もし韓半島の統一を語るのならば「経済的に強く結びつきつつ,心理的な距離を近づける方法」を考えていかなければならないでしょうね。相手を信頼できずして心理的な距離は近づかないことでしょう。僕が冒頭で「統一を考えるには時期が早すぎる」と述べたのはそこです。南北韓や関係国にも平和を求める気持ちが根付き,互いを思いやり,信頼できるようになる日がいずれ来れば良いのですが,もう少し先になりそうですね。
今回はここまで!
(ユイン)