チョンソンです。

今年は3.1運動から100年ということで、韓国では大々的な式典が行われていました。
https://www.youtube.com/watch?v=RVMb5rhMCPA&feature=share

　驚きは前回紹介した映画『金子文子と朴烈』で、朴烈役を熱演したイ・ジェフンが、文在寅大統領の隣で行進していたこと。同じく俳優のユ・ジテや慰安婦被害者のイ・ヨンスハルモニも参加していて、現地で見られた人はラッキーだったのではないかと思います。

　日本による植民地支配に異を唱え、独立宣言をした33名が官憲に逮捕されたことで、彼らを支持する民衆が朝鮮独立を叫んだ「3.1運動」は、民族のアイデンティティを取り戻すためのものでした。
　そして当時の日本国内でも、この3週間ほど前に朝鮮からの留学生たちが独立宣言文請願書を日本の貴族院などを郵送し、独立を宣言した「2.8独立宣言」が起きました（2.8独立宣言については、2月19日のブログで詳しく紹介しています）。

　しかし日本ではこれらを「反日運動だった」と報道することも多く、とても残念に思っています。また当時の朝鮮半島を日本が統治したことで「インフラが整うなど近代化されたのだから、日本はむしろ良いことをした」という意見を聞くこともあります。

　本当にそうだったのでしょうか？　そして当時の庶民は、どんな生活をしていたのでしょうか……？　

ということで韓国の歴史博物館である「高麗博物館」https://kouraihakubutsukan.org/　　の前館長、樋口雄一さんに質問してきました。

樋口雄一さん

　樋口さんによれば当時の朝鮮は農業国で、植民地支配当初の人口は約1500万人、解放直前の1945年の人口は約2500万人だったそうです。約90％の人が農民で、土地の多くは地主のものでした。庶民の生活は厳しく、多くの農民は肉ではなくて雑穀やキムチ、テンジャンを使った料理を食べていたと、樋口さんは言います。

　日本人は朝鮮半島の中でも日本人社会を形成して暮らしていたため、商店などでの接触はあっても、日本人と朝鮮人が交わることはありませんでした。日本人家庭には炭が、朝鮮人家庭にはオンドル用の薪が配給され、大半の日本人女性はキムチを食べず、チマチョゴリを着ず、オンドルがある家には住んでいなかった。つまりよく言われるインフラ云々は日本人社会のためのものであって、朝鮮人が利用するためのものではなかったのです。

　そして日本本土への動員に関わったのは面や里（今で言う町や村）の長で、彼らは朝鮮人だったことから「強制動員は、朝鮮人が自分たちでやったこと」と言う人もいます。しかし言うことを聞かない面長や里長がいたら、警察は彼らを逮捕していました。もちろん警察官には朝鮮人もいましたが、彼らを束ねていたのは日本人で、もっといえば当時の朝鮮総督府でした。樋口さんはこの構造に対して

「日本人は自分達の手を汚さず、直接的な行動は朝鮮人におこなわせていました。それにより戦後、朝鮮人社会に分断が持ち込まれました。日本では植民地時代の経済的な支配や土地の支配の話が出ることはありますが、自分たちが支配したことで朝鮮人同士が分断したことは、あまり話題になりません。だけどこれこそが、一番の問題だと思います」

　と言います。それぞれに事情があり、立場も違ったため、やむを得ず支配側に加担した人もいたことでしょう。しかし動員されたために家族を亡くすなど、朝鮮人同士の間に深い遺恨が残りました。そのことを考えたら「良いことをした」なんて言えるはずはない。
　でももともと書類を保存する習慣がなかったり、面事務所が追及を恐れて廃棄したり、のちの戦争で焼失したりしたため、当時の資料はほとんど残っていないそうです。だからこそ「日本のおかげで近代化されて良かった」という主張をしてしまう人がいるのは、ある意味仕方がない（とは言いたくないけど、他に適当な言葉が見つからないので）のかもしれません。

　だからこそ歴史を学ぶ必要が、私たちにはあると思います。それは日本で教えられているものだけではなくて、当事者の話を聞いたり、韓国側からの視点からも見ていく必要があると思います（高麗博物館でも6月23日まで、3.1独立運動100年展をやっていますよ！詳細はこちら）。

　また前回紹介した金子文子や、彼女と朴烈を助けた布施辰治弁護士のように「朝鮮人と連帯した日本人がいるということも知っておいて欲しい」とも、樋口さんは言います。一体、どんな人がいるのでしょうか。それは次回ご紹介したいと思います。

ではまたアンニョン。

(チョンソン)